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南仏ニームに住む門田尚子さん(南国市出身)が、南仏の陽光の中での日々のうつろいを描写。

 

2008年2月アーカイブ

toriko04nao.jpgギリシャを旅行したときのことを、ふと思い出しました。もう10年以上前になります。今でも心に残っているのは、ギリシャ時代の遺跡や紺ぺきのエーゲ海や、絵はがきのような美しい景色だけではありません。

 

黒い服を着た小柄なおばあさんがロバに乗り、オリーブの小枝を鞭代わりに上手に使ってロバを走らせている姿や、洗濯場に集まった老若入り交ざったおかみさんたち。村では黒い洋服を着ている女性が目に付きました。年配の女性が多いようだと思っていたら、黒ずくめの格好をしているのは未亡人だと後から聞きました。同じヨーロッパでもフランスから比べれば、ずいぶん牧歌的な人々の暮らしの様子がとても印象に残りました。

 

それから、忘れられない思い出があります。好奇心から扉を押して入ってみたギリシャ正教の教会。初めて見る金をふんだんに使った、まさしく絢爛豪華な内装に目を奪われてしまいました。そのうち、暗がりに目が慣れてきて、誰もいないと思って入った教会の中に、たくさんの女性がいることに気づきました。

 

ミサの準備をしていたようで、無言のまま皆さん忙しく立ち働いていたのです。その中の一人の女性が私に気づき、振り向きました。私は被っていた帽子を取り会釈しました。無意識のうちにとった行動でした。自分のしたことに気付いたのは、相手の女性が会釈を返してくれたからでした。とっさに会釈をしているなんて、われながら「どこまでも日本人だなぁ」と思いながら、申し訳ないような気持ちでそっと教会を後にしました。

 

私にとっては物珍しい異国の建物でも、土地の人たちにとっては大切な生活に密着した宗教の場所だったのです。好奇心から帽子も取らず、ずかずかと入ってしまったことを反省しました。と同時に、遠い国の見知らぬ人とささいなことにせよ、触れ合う機会を持てたことをとてもうれしく感じました。私のした日本式のあいさつをギリシャの女性がきちんと受け止めて返してくれた、一瞬でも気持ちが通じたようでそれがとてもうれしかったのです。

 

旅、大好きです。残念ながら近年は日本に帰るのがメインの旅行になってしまい、外国を旅する余裕がありません。今は、もっぱらこの南仏で、日本からいらっしゃるお客さんを案内する立場になっています。少しでも印象に残る旅をしてもらうために、お役に立つことができるならという気持ちでご一緒させていただいています。

 

【写真】南フランス・モンペリエのペルー公園


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