
きょうの言葉 われらの春秋はこれからだ
なあに、われらの春秋はこれからだ
「侠骨記」の「買われた宰相」(宮城谷昌光著、講談社文庫)より
※紀元前いまから2600年以上前の中国春秋時代の秦の宰相、百里奚(ひゃくりけい)の物語。百里奚は自分を頼むところが強く、諸国をさまよい、仕官しますが、なかなか志を遂げることができません。
とうとう疲れ果て、安定を求めて、苦楽を共にした親友とも別れて、ある国に就職することになります。その国も侵略を受けて、秦の国に送られることに。
秦の国から逃亡し、そこで奴隷にされてしまうのですが、その時70歳。
しかし、秦の国の王様の家臣に百里奚の見識を認める人がいて、結局黒い羊の革5つと交換されて、再び秦の国へ。そこから、運命の扉が開きます。
王に認められてなんと90歳で宰相に。「徳」の政治で、民衆に愛されます。
「激情を抱いて、諸国をさまよった百里奚を、そこまで寛容の人にかえたものはなんであったのだろう。これはもう、時の流れが、彼の不純な感情を浄化し、人や国の栄枯盛衰をみつづけたすえに確立した人格を、洗い出してくれたとしかいいようがない」
「百里奚の前半生は不運続きであったが、いったん幸運をつかむと、こんどは幸運ばかりつづいた」
そして「長生きはしてみるものである」と続きます。
小説を書き続けて、ずっと報われず40歳代後半に世に認められた宮城谷さんだけあって、その筆致は温かく、この作品に特別の思い入れを感じます。
50歳になり、髪に白いものが交ってきて、ずっと一緒だった親友に百里奚が「わしのせいで、あたら春秋を無にさせて(時を無駄にさせて)しまった。すまぬ」と謝ります。
その親友はしみいるような微笑を返し
「なあに、われらの春秋はこれからだ」。
そうです。いくつになっても「これからが春秋だ。これからがおれの、私の時代だ」と信じて生きているときっといいことがあります。
あきらめずに、歩いていきましょう。
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