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高知市で在宅医療に取り組む医師、和田忠志さんが、医療のことや日ごろ考えること、身辺のことを自在につづります。

 

土佐弁について(4)

私は東京で生活し、関東出身の人と間違えられるところまで東京弁を会得したと自負しています。私が関東にいるとき、私を関東外出身と言葉から見破れる人はいません。また、高知で、高知の人と話すと、やや古典的でかなり純粋な土佐弁で話すので、私が高知の人であることを疑う人はいないと自負しています。

恐縮ですが、バイリンガルといわせてもらおうと思っています。しかし、私が東京弁をほぼ完璧に話せるようになるまでに7年間の意識的なトレーニングが必要でしたので、首都圏から高知に転勤して一年では、土佐弁を理解したり話したりすることは困難だろうと推測します。

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土佐弁中級編

「が」(の)、まっこと(まったく)、「ぜよ」(んだよね)とか、「ほいたら」(そしたら)、「いかんちや」(だめだよう)、とかの比較的類推しやすい言葉は、置き換えで理解していけるのですが、他県の人からみて、土佐弁で難しいものの一つは動詞に接続する「ちゅう」と「ゆう」の使い方です。

「雨が降りゆう」というと、今まさに雨が降っている状態を表現し、「雨が降っちゅう」というと、道などが濡れていて雨が降った形跡があることを指します。「雨が降りよった」というと、その場面を思い出して、雨が降っていた状態だったことを回想していること、「警察官が来ゆう」というと、警察官がまだ現場に到着していないが来つつある状態を話者が観察している(あるいは来つつあることを伝聞などで確認している)ことを指し、「警察官が来ちゅう」というと、すでに警察官が現場にいることを指します。「警察官が来ちょった」というと、すでに警察官が現場から立ち去ったあとを表現します。

この言葉は、標準語の「来てる」「来た」などで表現されない土佐弁特有の時制であり、理解が困難なようです。

もうひとつ難しいのは、のうが悪い(具合が悪い)、まぎる(じゃまになる)、ちびる(磨耗する)、こじゃんと(とても)、たごる(咳をする)、わりことし(いたずらっ子)、難儀な(苦しい)、などの標準語にない単語を覚えることです。

これらの単語を会得して使えるようになると、かなり土佐弁の深い理解に至ったといえると思いますが、なお、これらは中級であると思っています。私が上級編と思うのは、「同じ言葉だが違うもの」「言葉の組み合わせの異なるもの」の会得です。

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土佐弁上級編

たとえば、「太い」という言葉です。「おう、おまんくの子供さんも六年生かねぇ、うんと太ったねぇ」(おう、おまえんとこの子供さんも六年生だっけ、とても大きくなったねぇ)というと、子供はやせていても問題ないわけです。

この「太った」というのは大きくなったのであって、身長などが伸びたことを主に意味します。「こないだねぇ、チヌを釣りに行ちょって、うんと太いががかかったがやけんど、逃げてしもうてねぇ」(こないだ、チヌを釣りに行ってて、とても大きなのがかかったんだけど、逃げてしまってねぇ)というと、このチヌは「丸々太ったチヌ」という意味ではなくて、「大きな魚」であったことを意味します。こういうものの理解が難しいのです。

それから、「おなかが張る」や、「うるさい」です。高知で「おなかが張った」というとしばしば快感を伴う満腹感を表しますが、関東では「おなかが張る」というと病的あるいは不快感を表す意味となり、満腹感の意味はありません。

高知で「うるさい」というと、単に「やかましい」の意味ばかりでなく、「苦しい」の意味にも使用されますが、東京弁には「やかましい」の意味しかありません。

土佐弁で「えらい」というと「偉大である」という意味のほかに、「苦しい・つらい」という意味がありますが、東京弁にはその使用法はありません。

「ごくどうもん」というと、土佐弁では「ぐうたらな人」を主に指しますが、東京弁では「やくざ」という意味に特化されて使用されます。こういう言葉の理解や使用法が難しいのです。

それから、お金を両替するとき、高知では「お金をこわす」といいますが、東京弁にはこの表現はなく、「お金をくずす」といいます。預けてあるお金を銀行から戻してもらうことを高知では「お金を引く」と言いますが、東京弁は「お金をおろす」です。

「髪をつむ」「爪をつむ」は土佐弁で、この表現法は東京弁には存在せず、東京弁では「髪を切る」「爪を切る」という表現しかありません。一方、「花を摘む」は土佐弁と東京弁で共通です。

このような表現で、土佐弁を使用できるようになったとき、その人は、本当に土佐弁上級に達したと考えてよいのではないかと思います。

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このページは、uniqueが2010年8月27日 17:32に書いたブログ記事です。

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