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高知市で在宅医療に取り組む医師、和田忠志さんが、医療のことや日ごろ考えること、身辺のことを自在につづります。
システム管理者: 2009年6月アーカイブ
松戸から転勤した職員たちが異口同音にいうのは、「高知は食べ物がおいしい」ということです。
私も、高知を離れて28年ぶりに高知で活動しているのですが、確かにそういう気がします。
ともかく、スーパーで買う野菜などがおいしいし、ごく普通の定食屋で出される料理がおいしいのです。これはまちがいないです。
さて、高知は日本の中でも在宅医療の供給が少ない土地で、「なかなか在宅医療は定着しないのではないか」という意見もよく聞きました。
しかし、実際に、高知市内で在宅医療を行ってみての私の感触は、「千葉県よりもやりやすい」というのが率直な印象です。
その理由は「家族が保たれている」ということが一番大きいと思います。
千葉県で活動しているとき、土着の農家の方々もそれなりの数で診療させていただきましたが、実際には、患者さんの大部分は「地方から出てきて首都圏で働いてきた人」でした。
地方の県から、学生時代などに出てきて、首都圏で結婚し、子供をつくり、定着した人たちです。
その人たちが、寝たきりや治らないがんになったとき、私たちの扉をたたかれるのでした。
「血縁親族から切り離された核家族のなかでの家庭介護」をどう構築するか、あるいは「核家族の家庭介護崩壊にどう対面するのか」が私たちの主要な仕事でした。
しかし、高知は少し事情が違います。核家族と言っても、一族が県内に居る人が圧倒的に多いのです。
また、地縁がよく保たれています。「高知の女性は働く人が多く、家での介護に専念しない」と聞いてきましたが、それでも条件がはるかによいという印象です。
そもそも、働く女性は、基本的には勤勉で機転が利くので、「所詮はマネジメントである家庭介護」構築も困難ではないのです。
改めて自分のことを振り返ってみました。私の先祖は江戸時代末には潮江(高知市内)にいたことが分かっています。
私の親族で、私が直接認識できる人だけでも50人程度が県内に在住しています。こんなことは、千葉県在住者の核家族にはありえないことです。そんなことを感じながら、高知での仕事を始めました。
【写真】あおぞら診療所高知潮江から見た虹
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私は千葉県松戸市で「松戸市高齢者虐待防止ネットワーク」を市役所の方々や民間事業者の方々とともに立ち上げ、運営してまいりました。
その経験から、30代~40代になっても、ずっと親のスネをかじり続け、親の年金をせびったり、自分の意思に反すると親に狼藉を働いてしまう…という若者の事例を多く見てきました。
「近頃の若者は・・・」なんてことはないという前言を翻すようですが、やはり、「近頃の若者」というか(すでに若者と言うには30代~40代になってしまっているのですが)、そういう人が、いまの時代に多いことも、また事実だと思うのです。
実はこのことは、前回述べた「高度成長期に青年を生きた人は、まじめに働けばそれなりの財産を手にしている」こと、そのような財産をある程度持つ方々が、今、老人になっているということと無関係ではありません。このことについて、少し私が考えたことを書いてみたいと思います。
私は、現在は、「若年者が高齢者に比較して力を失っている社会」ではないかと思っています。例えば、戦前であれば、30歳の男性は、「妻や子供を残して戦争にいかなければならなかった」り、(平均寿命も短く、加齢により虚弱になる年齢も早かったため)「すでに年老いた父母を引き取る必要がある」ことも珍しくなかったはずです。
あるいは、その年になれば、「自分の親や配偶者の親の葬式を出す」こともしばしばあったと思われます。あるいは、お嫁さんも25歳くらいになると、衰え始めた姑よりも体力も気力もあり、「お母様には洗濯物たたみだけお願いします。井戸の水汲みとか、重いもの持つのは私がやりますからね。お料理も全部私がやりますから心配要りませんよ」とか言って、完全に家を取り仕切ることができたかもしれません。
ところが、現在、長寿社会の中で、通常、「30歳の男性の両親」は、多くの場合、健在です。健在であるばかりか、心身ともに高い能力を維持し、かつ、高度成長期に蓄えた資本も十分に持っている両親は珍しくありません。
そして、経済力でも、また、様々な社会的能力でも、息子の世代よりも力に恵まれていることは珍しくありません。65歳の男性は元気で、まだまだ働く気力があり、嘱託などの仕事をしながら、さらに孫を自動車で保育園に送り迎えする…。
64歳の女性は体力と能力に恵まれ、ボランティアはするし、家事は何でもするし、料理も30歳の嫁よりはるかに上手である…なんてことは、今の社会では珍しくありません。もう、若い人が、かんたんには年配の人にかなわない、そういう社会でもあります。
このような社会では、30歳の男性が、「虚弱になった親を引き取る」「親の葬式を出す」「命がけで戦争に参加する」という社会と異なり、どうしても、親に依存してしまう30歳の男性を生み出してしまう、そういう「温床」があるような気がしています。
親の持ち家に、30台や40台の息子が継続して住み続け、継続的な就労を行わず、両親に暴力をふるい、経済的虐待を行うなどの現象は、親の経済的蓄積と、親の身体的・精神的能力が維持されていることを前提としています。
もちろん、そればかりではなく、若年者の失業率が高率であるという社会背景もあります。
長寿社会はすばらしいことですが、「親の能力が高く保たれる」この時代において、「若い世代を積極的に独立させる手法」をとっていかないと、このような、若年世代が親に依存したまま継続するような状態が生み出されてしまうように思わます。
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その経験から、30代~40代になっても、ずっと親のスネをかじり続け、親の年金をせびったり、自分の意思に反すると親に狼藉を働いてしまう…という若者の事例を多く見てきました。
「近頃の若者は・・・」なんてことはないという前言を翻すようですが、やはり、「近頃の若者」というか(すでに若者と言うには30代~40代になってしまっているのですが)、そういう人が、いまの時代に多いことも、また事実だと思うのです。
実はこのことは、前回述べた「高度成長期に青年を生きた人は、まじめに働けばそれなりの財産を手にしている」こと、そのような財産をある程度持つ方々が、今、老人になっているということと無関係ではありません。このことについて、少し私が考えたことを書いてみたいと思います。
私は、現在は、「若年者が高齢者に比較して力を失っている社会」ではないかと思っています。例えば、戦前であれば、30歳の男性は、「妻や子供を残して戦争にいかなければならなかった」り、(平均寿命も短く、加齢により虚弱になる年齢も早かったため)「すでに年老いた父母を引き取る必要がある」ことも珍しくなかったはずです。
あるいは、その年になれば、「自分の親や配偶者の親の葬式を出す」こともしばしばあったと思われます。あるいは、お嫁さんも25歳くらいになると、衰え始めた姑よりも体力も気力もあり、「お母様には洗濯物たたみだけお願いします。井戸の水汲みとか、重いもの持つのは私がやりますからね。お料理も全部私がやりますから心配要りませんよ」とか言って、完全に家を取り仕切ることができたかもしれません。
ところが、現在、長寿社会の中で、通常、「30歳の男性の両親」は、多くの場合、健在です。健在であるばかりか、心身ともに高い能力を維持し、かつ、高度成長期に蓄えた資本も十分に持っている両親は珍しくありません。
そして、経済力でも、また、様々な社会的能力でも、息子の世代よりも力に恵まれていることは珍しくありません。65歳の男性は元気で、まだまだ働く気力があり、嘱託などの仕事をしながら、さらに孫を自動車で保育園に送り迎えする…。
64歳の女性は体力と能力に恵まれ、ボランティアはするし、家事は何でもするし、料理も30歳の嫁よりはるかに上手である…なんてことは、今の社会では珍しくありません。もう、若い人が、かんたんには年配の人にかなわない、そういう社会でもあります。
このような社会では、30歳の男性が、「虚弱になった親を引き取る」「親の葬式を出す」「命がけで戦争に参加する」という社会と異なり、どうしても、親に依存してしまう30歳の男性を生み出してしまう、そういう「温床」があるような気がしています。
親の持ち家に、30台や40台の息子が継続して住み続け、継続的な就労を行わず、両親に暴力をふるい、経済的虐待を行うなどの現象は、親の経済的蓄積と、親の身体的・精神的能力が維持されていることを前提としています。
もちろん、そればかりではなく、若年者の失業率が高率であるという社会背景もあります。
長寿社会はすばらしいことですが、「親の能力が高く保たれる」この時代において、「若い世代を積極的に独立させる手法」をとっていかないと、このような、若年世代が親に依存したまま継続するような状態が生み出されてしまうように思わます。
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