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ミスマッチ?ベストマッチ!【高知市・珈風帆】
チーズトーストは好きですか?
モニ鍋「はい、私はチーズトーストが好きです。あれは最も素晴らしい発明の一つです」
乳製品独特の濃厚なコク、絶妙な塩気、ねっとり柔らかな舌触りがパリサクのトーストと極上のマッチング。こたえられないですね。ハムとの相性も素晴らしい。
マーマレードトーストはどうでしょう?
鍋「はい、私はマーマレードトーストも大好きです。それはとてもおいしいので、私はしばしば2枚かそれ以上食べることがあります」
モニ明「何でそんなに直訳風なんですか」
気を取り直して。トーストに何を付けて(のっけて)食べるかというのは永遠のテーマである。バターに始まり甘いものはジャム、ハチミツ、グラニュー糖、チョコレートスプレッド、ピーナッツバター、メープルシロップ。食事系ならハム、ツナマヨ、ベーコンエッグ、目玉焼き、スクランブルエッグ、ポーチドエッグ、オムレツ・・・
鍋「卵の食べ過ぎやないかなあ」
ほっといてください。中にはノリの佃煮を付ける人もいるし、ごまペーストなどという世紀の発明もある。「ご飯のおかず」に匹敵するほどの世界の広がりがある、それがトーストの付け合わせなのだ。
その中でチーズとマーマレードは、何というか少々地味である。それぞれハムとジャムの陰に隠れてあまり脚光は浴びないが、いぶし銀のうまさをたまに見せつけて玄人をうならせるタイプ。野球で言えば2番ライト平野という感じ。
鍋「西武ライオンズか・・・古いなあ・・・」
だから少しほっといてください。強かったんだからあの時のライオンズ。それはいいとして、チーズとマーマレードは永遠の2番打者である。実力を十分に持ちながらメーンを張れない不遇さも玄人心を誘う。プロレスラーで言えば大仁田厚に対する渕正信という感じ。
鍋「・・・せめて田上明とかにせえよ・・・古すぎる・・・」
明「がっ。分かってないなあ元世界ジュニアヘビー級チャンプのすごさを。あの小林邦昭に勝ったんですよ」
鍋「知らんがな。ほら、そろそろ読者さんが引いとる」
話を元に戻します(何事もなかったかのように)。チーズとマーマレードはそんな感じを持っている。しかしもしそれが合体したとしたらあなたどうしますか。
鍋「・・・話がよく見えないんだが」
明「だからですね。トーストにチーズ乗せて焼いて」
鍋「うんうん」
明「その上にマーマレード塗っちゃう」
鍋「ええええええええええ」
私もそれを食べるまでは想像もつかなかったが、本当に驚くべき美味というのはあるところにはあるものです。やってきたのは高知市西塚ノ原の喫茶店「珈風帆」。住宅街に近い、落ち着いた雰囲気のこぢんまりとした店だ。
少しだけ光量を抑えた店内は柔らかい雰囲気で、何しろ、豊富なメニューに驚く。
モーニングからしてトースト、タマゴトースト、ハムトーストと豊富で、クロワッサンやオムレツ、和食まである。ランチはスパゲティーや丼物、カレーとレストラン並み。もうどれから食べようかと迷う。
鍋「板さん、こう右からずらっと握ってくんな」
明「そのベタなボケにどう返事すればいいんだよ僕はよ」
しかし迷うことはなかったのだった。ここは伝説のチーズマーマレードトーストしかあり得ない。何しろ、これを食べに南国市などから通う人もいるというほど隠れた人気メニューである。
鍋「隠れたままが良かったりしてなあ」
明「やめて食べる前にそんなこと言うのは」
実はドキドキものであった。だって、チーズとマーマレードですよ。ミカンにバター塗らないし、たこ焼きにジャム掛けないし、酢豚にパイナポー入れないでしょ。いや最後のは普通に入ってるけどなんか納得いかないでしょ。どんな味になるんだろ。想像がつかない。どきどき。
ほどなく、それは運ばれてきた。ちょっと厚めのトーストが見た目でも分かる、かりっと中はふわっと焼き上げられ、その上に少しとろけたチーズが載っている。すごくおいしそうです。しかしその上にマーマレードが「何か問題でも?」と言いたげにごく普通に塗ってある。すごく見たことがない光景です。
考えられないミスマッチのような光景だけど、不思議と匂いや雰囲気がそうではなかった。ごく当たり前に「うまそう」と感じ、ごく普通に口に運ぶ。
明「うううううー」
鍋「どうした?ええか、ええのんか?」
明「ウウウウウウマーーーー! うまーーーーーーい!!」
鍋「ええんかい」
いや驚いた。本当に美味。少ししょっぱいチーズとバターと、コク甘いマーマレードが絶妙のマッチング。甘いだけのジャムではこうはいかない。わずかな果皮の苦みと柑橘系特有の香りが、ややもすると鈍重な乳製品の味の脇を引き締めているのだろう。
少なくとも、チーズとマーマレードという響きから想像されるようなげてものの味では一切ない。むしろ上品な味わいで、ひと口ごとにじょわっ(チーズとマーマレードの柔らかな食感)ざくっ(焼きたてトーストの香ばしさ)ふんわーり(すべてが渾然一体となった高貴な風味)。口中に至福が踊る。あああ幸せ。
明「うまっ、うまっ」(夢中)
鍋「ええのんか・・・ええのう」
あっという間に食べてしまいました。満足しつつ興奮しつつ、マスターの大畠政幸さんにお話をうかがう。お店は以前、高知市一宮にあり、9年前に現地へ移転した。「一宮のときのお客さんが、今でも来てくれるんですよ」とうれしそうにほほえむ。
逸品、チーズマーマレードトーストは奥さんの美和子さんが作り出した。「チーズが好きなんです。カレーにもチーズを入れるぐらい」。ある日、大好きなチーズトーストに何の気なしにマーマレードを塗り、そのおいしさに目覚めたという。
明「普通はそんなことしないと思います」
鍋「天啓っていうのかな?お見事です」
自信を持ってメニューに入れたが、当初は誰も頼む人がいない。しかし、たまに好奇心から(半笑いで)注文した人はほとんどみんな、食べてびっくり。「なんじゃこりゃー!」「うまー!」と騒ぐ。徐々に「マニアックな」(美和子さん)人気が出始め、いつしか定番メニューへとなっていった。
しかしこの奇跡のチーズマーマレードトーストは、残念ながら珈風帆の看板メニューとまでは言えない。その理由は、他のメニューが充実しすぎているからだ。
モーニングだけでも10種類近くあるのに、ランチものときたら4~5品が並ぶ洋風懐石風の日替わりを始め、シーフードスパゲッティ、ハーブチキンイタリアンサラダなど多種多様。手作りのメニューはきれいな写真が豊富で、ちょっと高級なレストランに来たような気分になる。
この特製オムライスとか、実にうまそうですねえ。盛りつけにも美意識を感じる。大畠さんは少しはにかんで「料理は全部、自己流です。スパゲッティを炒めたり、決して王道ではないですが、気楽な味の楽しみ方もあると思います」。
デザートは美和子さんが担当。黒ゴマアイスやミルク金時など、和風系が充実している。「せっかく食べてくれるなら、満足してほしい。残さず全部、楽しんでください」と笑った二人が送り出すメニューはいずれも細部まで心を尽くした味付けで、要するに、うまくて、楽しい。
二人三脚で切り回すお店を、最近は息子さんも手伝うようになったという。一家の暖かさが、そのままにじみ出すようなお店はあたたかく、居心地がいい。雰囲気のいい内装と小さなBGMに耳を傾けていると、すぐに柔らかな時間がやってくる。願わくば、奇跡のミスマッチを楽しむだけでなく、このお店そのものを楽しむ心の余裕を持っていただきたい。
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【お店データ】
珈風帆(かふうほ) http://www.kcb-net.ne.jp/kafuufo/
高知市西塚ノ原107-15
088-844-9863
営業時間8~19時半 火曜定休
※自家製ドレッシング(180ml、380円)は和風とイタリアンがあり、絶品です
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