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400円の豊潤【高知市・ローヌ】
昨夜、とても月がキレイでしてね。夜空にくっきりと。凛とした、というのはああいうことでしょうか。何だか見ているだけで体がきれいになっていくような、あかあかと青白くそれでいて高貴な・・・
モニ明「何を言ってるか分かりませんが、月がきれいだったんですね」
モニ鍋「で、月を称える歌を歌った」
明「おぼろ月夜・・・はちょっと違いますね、昨夜は快晴でしたし」
鍋「月がとっても青江三奈~♪」
明「どんな替え歌だよ!」
冗談ですて。しかしまあ意外と月に関する歌って少ないですよね。「月光値千金」とか「ムーン・リバー」とかぐらいしか思いつかない。
明「確かにヒット曲は少ないですが、元P-MODELの平沢進さんは何度も『Moon』が入った曲を作っていますし、Fly Me To The Moonとかオジー・オズボーンの『Bark At The Moon』(月に吠える)とか、いろいろ名曲はあります」
鍋「ああ、そういえばヒット曲があった」
明「Swingin' Moon(渡辺満里奈)ですか?」
鍋「月がとってもあおい輝彦~~♪」
明「もうえいんじゃそれは!!」
◇
鍋「で、まあ、モーニングなわけやが」
明「さっきのはどういうマクラだったんですか?」
鍋「ただの気分・・・かな」
明「マクラ失敗ですね」
たまにはそういう時もある。でもな、昨夜、月を眺めてて思ったんだけど、人間時々は上を向かなければならんな。いつもいつも下向いていじましく歩いてたら、いいことも起こりそうにないじゃないですか。
明「涙がこぼれ~ないよおおぅに~♪」
鍋「うわ先に歌われた。わしの持ちネタ取られた。まあそれはえいとして」
明「いいんですか」
いいとして。上向いて歩くからこそ、きれいな月も見えるし、やる気も出る。だいたい下向いて歩くのは何のためにじゃ。小銭でも落ちてないかときょろきょろ探しとるんと違いますか。そんなに人生困っておられますか。
明「しかし団長、いつも下見て歩いてますな」
鍋「はっ」
明「小銭は大事ですしな」
鍋「・・・(はにかんでいる)」
明「しかし、小銭ではモーニングは無理じゃないですか?」
鍋「それがそうでもない。小銭というと失礼ですが、いいお店があります」
明「何ですと?」
鍋「モーニングはモーニングでも、安くてたっぷり、しかもうまい。そんなお店です」
明「さて、行きましょうか、下を見ながら」
鍋「そこの自動販売機の下な、要チェックやからな」
◇
さて、例えば400円です。400円って何が買えますかね?
明「牛丼380円です。または豚丼330円+半熟卵60円=390円です。おなかいっぱいです」
いきなり話ぶち壊すこと言い出したなーこの人。まあそういうのもいいかもしれませんがね、結局この値段で食べられるのはファストフードでしょう。まともなご飯を500円以下で食べるのは難しい。
明「まあ確かに、500円で考えればファストフードかコンビニか、ホカ弁か」
鍋「しかしながらこのお店では400円でモーニングが食べられる。しかも、かなりのボリュームや」
明「+150円で食後のコーヒーとか?」
鍋「ちゃんとコーヒーも最初からついとるがな」
明「期間限定セールとか?」
・・・。この格差社会、何かとだまされ搾取されている消費者としてはそういった疑心暗鬼も仕方あるまい。でも、このお店は間違いない。若者言葉で言えば「ガチ」です。ガチで400円でモーニングでおなかいっぱいです。
店名「ローヌ」。JR高知駅近くです。駅前を西へ行くと、高知警察署と郵便局があるでしょ。あれのもうちょっと西側。通りに面してます。
明「ピザの何とかいうチェーン店がありますね」
そこまでは行かんな。言うなれば龍馬学園の向かい、道路南側です。
明「ブックオフとかある辺りの、道路南側ですね」
・・・。君の生活習慣がかいま見えるなあ。何かもう大量消費的大手チェーン店ばかりで消費する毎日というか。そりゃファストフードばっかり食べてるんでしょう。こういう人にこそ、つまり今の若者にこそ、高知の喫茶店でご飯食べてほしい。
明「まあ私は別に若者でもないわけですが、今どき、そこそこのお年でもファストフード系を食べる機会は多いと思うので、喫茶という食文化を見直したいですねえ」
そういう意味では、この「ローヌ」はすごいぞ。騒がしい車通りから店内に入ると、そこは別世界。適度に古びた店内は静かで、小さな音量でジャズが流れる。ふっくらしたソファ、観葉植物、そして豊富な週刊誌と新聞。
鍋「これが高知の『きっさ』じゃー!」
明「この温かい既視感は何でしょうか。安らぐなあ」
モーニングは一種類のみ。注文後、しばし待って出てきたのは、トレイの上に所狭しと整然と並んだ箱庭的小宇宙であった。
鍋「いやあ、すごい、品数多いなあ」
明「もうある意味、懐石料理みたいですよね、こうなると」
コーヒー、ジャムトースト、サラダ、そして卵(味付けの煮卵やけど)。「4元素」は当然として、そこにカボチャの煮物と山菜、みそ汁、そして何と、そうめんまでついてる。これで400円。何度も言うけど400円。ちょっとスカした店ならコーヒーだって400円じゃ飲めないのに、これで400円。
鍋「何かもう、得したのを超えて、儲けたって感じ」
明「お、このみそ汁おいしいですよ」
安いだけじゃない。これは相当うまいモーニングだ!!ふんわりとしたゼンマイやコゴミは、だしが効いた上品な味付け。こっくりとした甘みのあるみそ汁、柔らかなカボチャも高水準。サラダもみずみずしくてうまいなあ。トーストはバターたっぷりで食べ応えあるなあ。
鍋「この、そうめんに乗ってるすまきがうれしいなあ」
明「すまき、って高知だけみたいですね。他県だとナルトになっちゃうみたい」
鍋「おやつ代わりに、すまきをかじったことがある人に悪いやつはおらんぞ」
明「何というか煮たり焼いたら、ちっともうまくないけど」
鍋「こうして生(?)で食べると妙にうまいよなー」
ついつい、和気あいあいとしてしまうのは、やっぱりお店の魅力でしょうか。店主の中山富紗子さんにお話をうかがう。いいお店ですねえ。しにせとお見受けしました。
「お店は30年以上ですけど、私は3年前からで、5代目なんですよ」
どういうこと?よく聞いてみると、「ローヌ」は長い年月の間に経営者が何度も変わったが、場所と名前は一貫して続いてきたという。栄枯盛衰激しい喫茶業界では非常に珍しいケースだ。
鍋「普通、経営者が変わったら改装して店名変えるもんやけど」
明「湘南風の『パイプライン』とかいうお店だったのが、中の人が変わってカントリー風の『浪漫巣館(ろまんすかん)』になったりするんですよね」
鍋「しかも居抜きやから、波乗りの絵とかまだ壁に書いてあったりしてな。かわいいインテリアとはなはだ合ってなかったりな」
明「すいません脱線しました」
それにしても5代目オーナー。その間、名前が変わらなかったのはきっと、お店が愛されてきたのでしょう。意外にも、中山さんが始める前まではコーヒー専門で、食べ物は出していなかったという。
「お客さんの声もあって、何かやらないかんなー、と。でもねえ、始めてからこれはえらいことや、大変やと気付きました」と中山さんは苦笑する。以前は比島で居酒屋を経営していた中山さん。喫茶店ならもっと楽かと思ったら、お客さんに満足してもらおうと品数の多いモーニングを出し始めてしまった。
卵やサラダ以外の煮物などは、毎日の日替わり。街路市などで仕入れる地場産品にこだわり、味付けも気を抜かない。その結果、「もう仕込みが大変。毎晩、夜中までかかってせっせとやってます」。居酒屋より大変かも、と屈託なく笑う。
鍋「中山さん、えい人やなあ」
明「人柄がにじみ出ますよね」
お客さんは年配の女性を中心に、クチコミで増え始めている。「ボリュームたっぷりでおいしい」という噂を聞いて店に来た人は、ほとんどがこのモーニングを見て「たまあ!」と驚くという。
「常連さんも多くてね。店に飾る花を持ってきてくれたり、お友達を連れてきてくれたり。みんないい人ばっかりなんですよ」
確かにお値打ちでおいしいモーニングは魅力だ。でも、人を引きつけてやまないのは、この中山さんの人柄も大きいのだと思う。ファストフードばかりで、おなかは満たしても心は寂しいこのご時世。「ローヌ」に集まる人たちは、日々の食事に何が必要なのかを知っているのだろう。
鍋「実はこのお店の情報、モニ探まで電話でいただきました。ご年配の女性で、お店をえらいことほめて、匿名のままお電話を切られましたが・・・」
明「きっと常連さんですよね。そんな熱心なお客さんがいることが、名店の証明でしょう。私も常連になりたい」
鍋「じゃあ、まずファストフードやめような」
明「・・・」
【お店データ】
喫茶ローヌ
高知市北本町1丁目7-14-1F
088-824-2848
営業時間 平日6~17時 土・祝日6~13時 日曜定休
※ランチも人気。魚料理が中心で、もちろん小鉢満載です♪
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