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これが王道HipHop

 よく見るHipHopのイベントとは風景が違っていた。踊り、ハンズアップするのではなく、じっとライムに聴き入るオーディエンス。体を揺らしながら脳内を真っ白にするのではなく、耳と心を直結させて、言葉を胸に刻む作業をしているように思えた。21日、キャラバンサライでのTHA BLUE HERBのライブは。

 BOSSのライムは、そこらに氾濫している「あなたとわたしの愛」の、しかも上っ面をなぞっただけのようなリリックとは違う。自らの古里・北海道札幌市平岸での光景と、オールドスクールHipHopを生み出したニューヨークの貧しきアフリカンアメリカンへの尊敬の念と、自らの信念、行動を描き出す。

 「札幌の奴に聞いてもらえばわかる 
  今も自らポスターフライヤーばらまく
  最初に打ったパーティー以来変わらず
  服屋 飲み屋 頭下げ遠回る」
            (「SUPA STUPID」)

 「あらゆる世界 陰に捨てられた
  哀しみを向いてラップしなくちゃ駄目だ」
            (「HIP HOP 番外地」)

 「今やHIP HOPはアイドルじみた奴らだけが
  リプレゼントしていると言われても慌てない」
 「今やHIP HOPは10代の不良だけが
  喜んでいると言われても慌てない」
            (「HIP HOP 番外地」)

 熱い言葉。鬼の連射。それはフロアに一体感をくれはしなかった。変わりに、彼の言葉を受け取った1人1人の心に青白い炎をともしてくれた、と思う。明日を生きる、勇気、ではなく覚悟を。そう、BOSSの言葉は「オレはこういうやり方で生きてきたけど、お前は明日から何をするんだ?」という問いだった。


 一瞬、バックトラックで「孤憤」が流れた。
 別冊SONIC10/11付の来高告知でも書いた、あの歌が。
 同じ日のこのブログでもふれた、僕の好きなライムが。
 僕は、僕自身の覚悟を問うた。
 「明日も、音楽を書く。」
 これがあなたへのANSWERです。BOSS。

 

 本日の1曲
 「Ain't no mountain high enough」/ Inner Life
      album「The original Salsoul classics」(1992年)より

 BOSSはこの曲のタイトルを何度も繰り返し、叫んだ。「あんたはその坂を越えなくちゃならないってことだ」という言葉とともに「Smile with tears」という曲で。アメリカのショウビズ界で何とかのしあがろうともがき、真剣に音楽に向き合ったアフリカンアメリカンへの、彼なりのリスペクトを僕は感じた。
 ニューヨークのアンダーグラウンドのクラブで愛されたこのダンスクラシックスは、きっと、フロアで踊っていた人々に勇気を与えたはずだ。


 越えられないほど高い山なんて、ない、と。
 

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