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別冊SONIC付記

 本日7日、別冊SONICをISSUEしました。BOOKレビューです。昨年12月に発行された、ヒップホップの歴史を描いた1冊「ヒップホップはアメリカを変えたか? もうひとつのカルチュラル・スタディーズ」(S・クレイグ・ワトキンス著、菊池淳子訳/フィルムアート社)です。

 ちょっと紙面では書ききれなかったことを、書きますね(紙面のは言葉足らずだったかもなー)。

 そもそもヒップホップはアメリカの、アフリカン・アメリカンなど移民の人々で、貧困層が暮らす「ゲットー」といわれる場所から生まれてきました。僕の青春時代―1980年代半ばごろのミドルスクールと言われるヒップホップは、ゲットーの生の声…つらさ、苦しさ、皮肉、嫌み、そしてユーモアもあるメッセージがラップされてました。後に知るのですがオールドスクールの中にも、そういうラップがあった。ニュースクールのJay-Zだって、シングルではなくてアルバムにはそんなラップがいくつもある。

 97年。作家の村上龍さんにインタビューした時、こう言われました。
 「佐世保(村上さんの故郷)には生の肉体を持ったアメリカ人が周りにいて、そこから情報が入ってきた。今はテレビや雑誌で多くの情報が入ってきてますが、それはビンテージジーンズがいくらであるとかいった情報でしかない。ただのファッション。黒人のラッパーの格好をしてても、アメリカの黒人がどれだけの差別を受けてきて、今も差別が残っているということをどの程度知っているか。それも知らないでしょう。異常ですよね」(注:僕は「黒人」という言葉を使わず、「アフリカン・アメリカン」という言葉を使うようにしています。近年、アメリカでは皮膚の色ではなく、ルーツを差してこう呼ぶようになっているからです)

 本書には、ゲットーの生の声がたくさんあります。その部分を意識して読んでほしいです。

 ただ「ゲットーの生の声」も大切ですが、ほかにも大切なものがヒップホップにはあります。本書は、そのことにもふれています。本の冒頭。ラッパーのジャ・ルールと、アフリカン・アメリカンの運動家、ルイス・ファラカン師の対談が描かれています。ルールはファラカン師に言います。「ヒップホップのファンは、俺たちがゲットーにいることを望んでいる」と。ファラカン師は答えます。「そのように企業やファンの言いなりになることは、死あるいは崩壊、破滅という結果しか招かない」と。企業やファンがつくり上げた偶像としての生き方ではなく、自分らしくあれ、という言葉だと思います。

 ヒップホップとは何か。本書はそれを問うている、と僕は紙面に書きました。

 僕の答えを言いましょう。かなりスキルを要する音楽です。ライムをどう書くか。それをどうラップするか。DJにもさまざまなテクニックが必要とされます。ただし、そのスキルの根底には弱い立場に置かれた人に共感できるような、多様な価値を認めるような心が必要ではないでしょうか。自らのつらい思い、体験を真摯に見つめることから生まれる、他者を温かく包む心が。そんな心が発する表現、自分らしくあるライムとサウンド、そしてスキルがあいまったものこそヒップホップだと僕は考えます。ま、以前からの僕のヒップホップ観なのですが、本書を読んで「こう考えてていいんだ」と意を強くしました。

 また、その心は間違いなく、ヒップホップというスタイルを生んだアフリカン・アメリカンへの尊敬の念も兼ねそろえます。THE BLUE HERBとかそうでしょ。絶対に忘れてない。ライブでは、曲の始まり方にオールドスクールのマナーを取り入れたりしてますし。One for the treble,Two for the bass…ってライムがそうです。

 これは、あくまでも僕の答え、僕のヒップホップ観です。皆さんが本書を読まれたら、「ヒップホップとは何か」という問いに対する自分なりの答えを見つけてみてください。

 

 本日の1曲
 「Rapper's delight」/ Sugarhill Gang
      compilation「Roots of rap」(2005年)より

 このコンピレーションを原稿執筆のBGMにしてました。いいコンピです。オールドスクールの入門編にどうぞ。そのオープニングナンバーが、本書にも取り上げられているこの曲。この曲がどうやって生まれたかが書かれています。そのシーンは本当にエキサイティングで、本の中にグーっと吸い込まれていきます。

 

 さあ、本日は山本精一@CHAOTIC NOISE。昨年末から思いで波止場再発を買い、BOREDOMS、ROVOを復習してたんで。むっちゃ楽しみです。

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