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2007年11月アーカイブ
だいぶ昔のこと、工石山に登っていたら、数人のおばさんたちが下ってきて、「赤良木はこっちかねぇ」と聞かれました。
彼女たちは頂上から道を間違えて下ってきたようです。「道を間違えているから頂上まで戻ったほうがよい」と説明すると、「ここはものすごいきついがぜ」と文句を言います。私はそれを無視して登りにかかりました。
後ろのほうで、「これを戻るのはもういやぜ、このまま下ろうや」などと相談しています。「戻って来いよ。たのむ」と密かに願いながら進んでいたら、彼女たちはあきらめたようで引き返してきました。
ある資料によると、山岳遭難事故でトップを占める原因は道に迷ったことだそうです。道迷いによる遭難を少なくする方法は実は簡単なことです。『道に迷ったら元に戻れ』このたったひとつの原則を堅持すればよいからです。ところが意外とこれができないようなんですね。
だいたい、ふもとから頂上に向かって登っている時に迷うことは少ないものです。なにしろ、ともかくも標高の高いところへ登って行けば、いずれ頂上に到達するのですから。もっとも、隣の山に登ってしまったといったといったドジなこともあったりするのですが??
登りの時には、道を間違えたことに気がついて、引き返すのも楽です。麓に向かって下ればよいからです。ところが、頂上まで登った後に下り道で迷うと、本来帰るべき方向とは逆の頂上に向かって登り返さなければならなくなります。たいがいの人は「あの険しいところ、急坂を再び登るのはもう嫌だ」と考えてしまうようです。そこで近道をしようと思って道のないところへ入ってしまいます。そういうとき多くの人は谷を下るようです。
沢登りという登山形態があります。渓谷を遡るものですが、これは岩登りに次いで高度な登はん技術や知識を要求されます。ザイル(ロープ)などの登はん装備も必要です。谷を下るのは登るよりもさらに難しい。そんな技術がある人なら、そもそも道に迷いはしないでしょう。
山で道に迷ったときは、『頂上まで戻る覚悟を決めること』。この"覚悟"こそが道迷い遭難をしないための大鉄則なのです。
登山に出かけるときには、もう1回頂上まで登る「覚悟」で出かけてください。
【写真】こんな技術や装備のある人なら谷を下っても大丈夫です。
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最近はなくなりましたが、昔は「どうして山に登るのか」とよく聞かれたました。
釣りなら晩飯のおかずができる。パチンコなら景品がもらえる。登山はただしんどい思いをするだけで何も得るところがないじゃないか。そのあたりに疑問があるようでした。
そういう質問をされても、相手を納得させられるような名答や、登るための明確な目的を持っていたわけではありません。ただ、山に登る動機はありました。
私が生まれたのは、上半山村杉ノ川(現:高岡郡津野町)で、周りを山に囲まれた谷底で暮らしていました。視界を遮っている山の向こうに何があるのか、大いに興味をそそられました。ある時、母に聞きました。
「お母ちゃん、あの山の向こうは、どがなく?(どんなところ?)」 母はめんどくさそうに答えた、「あっちはおおのみよね」 「ほんならこっちは」 「こっちはちょうじゃよね」。私は南の山の向こうには大きなノミが住んでおり、北の山の向こうには長い蛇が住んでいるのだと思いました。
朝な夕なに、わが村の最高峰・鶴松ノ森(1100m)を仰ぎながら、「いつの日にか、いつの日にか、あの頂に登ろう。そして、まだ見ぬ世界を見に行こう」。そう思っていたものでした。
転機は小学生の時に訪れました。担任の先生に連れられて梶ヶ森に登りました。そこで生まれて初めて雲海を眺めました。人間は努力次第では雲の上に登ることもできるのだと、その時初めて知りました。それが登山を志すきっかけになりました。
しかし、登山について教えてくれる人も、技術書も用具も、地図さえもありませんでした。だから一人で山に分け入って、自ら道具を作り、自然から生きる力を学んだんです。なーんてのは大嘘だけど、まぁ小中学生の頃に野山で遊び回っていたことが自然から学ぶ多少の練習にはなっていたと思います。
タイトルの「山に聞く」とは、大自然から学ぼうという意味です。人間は自然の一部であり、自然の摂理に逆らっては生きていけない。自然の声を謙虚に聞き、己の人生に生かしていくことが必要になります。登山は哲学です。
私が山に登るのは、まだ見ぬ世界を眺め、山の話を聞くためです。
【写真】朝な夕なに、仰ぎ見たわが村の最高峰・鶴松ノ森
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