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ラッセル
先日の土曜日は伊予富士(1756メートル)へ行っていました。
いの町本川の新寒風山トンネルから(旧)寒風山隧道へ登って行く道路には積雪がありました。寒風山隧道の登山口から、尾根へでるまでの間は踏み跡がついていました。踏み跡は寒風山へ向かっており、伊予富士方向へは誰も通っていません。
そのあたりで積雪は60-70cmくらいあり、そのラッセルにとりかかりました。深雪をかき分けて進むことを、登山ではラッセルといいます。Russelとは除雪装置を発明した人の名前です。
雪の表面が固くなって(クラストという)いますが、靴で踏むと割れてしまいます。だから、足を高く持ち上げて雪面に乗り、クラストを割って踏み込み、(足が沈み込んでしまうので)いったん足を抜いて周りの雪を落とし込んで再度踏み込み、その足に体重を移してから、反対側の足を持ち上げて雪面に乗り…という動作を一足ごとにしなければなりません。
急な上り坂なので、前に出す足が雪面に上がりません(要するに私の足が短いのだけど)。
200メートルほど進んだだけで、「あ、こりゃとても行けんわ」と、そうそうに登頂をあきらめてしまいました。そこから頂上まで夏なら1時間の行程ですが、この分では何時間かかるかわかりません。特に頂上直下の急坂はとても登れないだろうと判断したのです。雪がもうちょっと固いか柔らかければよいのですが、ちょうど具合の悪い固さなのです。
北風を避けるためにツエルト(非常用小型テント)を張って休憩場所を確保し、雪を溶かして紅茶を作り、冬景色をゆっくり愉しんでいました。
しばらくすると3人の登山者が登ってきました。彼らはスノーシューを履いています。「コーヒーを飲んでいきませんか」と声をかけたら、「ラッセルしておきますので、ゆっくり登ってきてください」と先へ行ってしまいました。
スノーシューやワカン(輪かんじき)は雪の上を歩くために靴に取り付ける道具です。今回、わかんを準備していたのですが、うかつにも玄関に忘れてきていたのです。ただ、四国の雪山ではほとんど役に立ちません。
クラストしていなければそのまま沈み込んでしまいます。クラストしていれば3-4歩は歩けますが、落とし穴に落ち込んでしまいます。クラストを割って埋まり込んだわかんを持ち上げるのに大きな労力を費やします。こうした道具は雪がある程度の固さであって初めて効果を発揮するのです。
そのむかし、三嶺(剣山山系にある山 1893m)の中腹にある山小屋から頂上まで12時間、頂上から山頂小屋まで1時間かかったことがありました。夏ならそれぞれ4時間と5分くらいで行ける距離です。四国の雪はそれほど始末に負えないのです。
そんなことを思い出しながらしばらくのんびりしていたら、別の3人組が登ってくるのが見えました。「7人で交代してラッセルすれば頂上まで行けるかな」と急に思い立ち、荷物をまとめて前の3人組を追うことにしました。
他人にラッセルをやらせて、自分はしんどいことをしない人がたまにいます。それはみっともないので、何とか追いつこうとするのですが、3人通ったあとでも(短い足が)いっぱい埋まり込んでしまいます。気ばかり焦ってなかなか進めません。頂上のすこし手前の鞍部まで行って、軟弱者の私は再び登頂をあきらめてしまいました。
前の3人組はリーダーだけが先へ進んでいたようで、頂上手前のピークに隠れて姿が見えません。登頂できたかどうか確認できませんでしたが、なかなかタフな人でした。
写真にあるのは、むかし使っていた古いわかんです。赤いベルトは後から付けたもので、もともとは麻綱で縛るようになっていました。
昭和30年代のある正月に天狗高原へ行きました。手違いがあって、山麓の東津野村郷(現: 高岡郡津野町)へ着いたときは夕方になってしまいました。山道を登っていると、地元の男性に呼び止められました。
「いま時分にどこへ行くのか」と聞くので、「この先で野宿をするつもりだ」と答えると、「うちへ泊まってゆけ」といいます。図々しい私と友達は一晩そこでやっかいになりました。その人が、このわかんを見て「これは何か」と聞くので、使い方を説明しました。
翌朝、その人はさっそくわかんを作っていました。その素早さにびっくり仰天です。もし、その後、郷のあたりの人がわかんを使っていたら、それは私が広めたものです。(本当かどうかわかんないけど?)
わかんは日本古来の道具ですが、最近は西洋式のスノーシューも使われています。浮力が大きいし、踵が持ち上がるのでだいぶ歩きやすいようです。しかし、急峻な日本の山では、やっぱりわかんが使いやすいと思います。
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