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古き岳の友よ(1)
あるとき、"かずお"君と岩登りの練習に出かけた。
彼がスイスイと登った岩場を私はどうしても登れない。
当時、クレッテルシューとドイツ語でいっていたが、クライミングシューズ(岩登り専用靴)が出始めたころだった。彼はさっそくそれを買って履いていた。私はキャラバンシューズ(ハイキング用の靴)である。
「お前は履き物が良いからいかん。それをよこせ」とむりやり取り上げて、彼にはキャラバンシューズを履かせた。
それで、結果はどうなったか。
全く同じことである。彼が難なく登れるところを私はどうしても行けない。
あたりまえである。
技術の悪さを道具でカバーできるわけがない。優れた技術があって、その上でよい道具を使えば、より良い仕事ができる。
技術のないものが、いくら良い道具をそろえても技術が高まるわけはない。
胴長短足の私と違って、彼はスマートな体格をしていた。当時有名だった、フランスの名山岳ガイド、ガストン・レビュファに容姿がよく似ていた。
それで私は、彼を「土佐のガストン・レビュファ」と呼んでいた。略したら土佐ガスである。(あ、いかん。高知の人間にしか分からんダジャレをゆうてしもうた)
「お前は、腕が長いから掴めるホールド(手がかり)が広いので有利なんじゃ」と、とうとう体格のせいにしてしまった。
剣山山系の三嶺(みうね、さんれい)に青ザレという場所がある。
山腹の広い範囲にわたって、ザレ(石や砂礫の急斜面)になっている。
あるとき、何気なくそこを見ていたら何か動くものがある。
「ありゃ、あがなところを登りゆう奴がおる」
そこを登る必要性など何もないのだ。双眼鏡でのぞいてみると、なんと"せいじ"君である。
大きなキスリングザックを背負って、足もとがズリズリずり落ちる急斜面をガリガリ登っている。
「げにまっこと、たまーるか、やちがない」
彼はいつでもここ一番のところで底力を発揮する。
私は「パワーのせいじ、センスのかずお」と彼らのクライミング技術を評していた。
その後、2人とも数々の山頂や岩壁を制し、いまも登山界で活躍している。かずお君は国際山岳ガイドでもある。
私も口だけなら2人に決して負けはしない。
【写真】プライバシー保護のため人物写真はない
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