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半世紀以上の登山歴を持つ竹村義仁さん(高知市)が、山や自然から学び考えたことを一歩、一歩記していきます。

 

山と人生の最近のブログ記事

先日、夜中に目が覚めると部屋がぐるぐる回っている。

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そりゃ安普請の家だから少々揺れるのはしかたがないが、ぐるぐる回るのはおかしい。船酔いをしたみたいに胸がむかむかして気持ちが悪い。トイレに行こうと起き出すと、足がもつれて歩けない。

廊下に座り込んで「こりゃぁ、まいったぜょ」と、しばしぼーぜんとしていました。いっときしてそれは収まり、その後は何ともありませんでした。

ところが、その翌日も同じようになる。女房に「目が回るぞー」というと、むりやり病院へ連れて行かれました。点滴を打ち、CTスキャンを撮ってもらったが、頭には異常がないという。そう、もともと頭は良いのだ。

「手足のしびれや、ものが変に見えることはありませんか」と女医さんに聞かれたので、「先生が美人に見えますが」と言いたかったけど、そんな冗談を言う元気はなかった。「それは正常です」というか、「あなたは極めて重症です」というか試したかったなぁ。

さらにその翌日も同様だったので、こんどは耳鼻科へ行って耳の検査をしてもらいました。しかし、こちらも異常は見つからない。今のところ原因不明です。

友達に話すと、「大丈夫か。もう歳なんだから気をつけろよ」といいながら、口元はにやけています。「やったー」という表情です。もっとありていに言えば「ざまー見ろ」です。

年を取ると、誰もが体のあちこちに故障が起きてきて、何かの持病を抱えているものです。しかし、私は大病を患ったこともないし、これといった持病もありません。山で鍛えたせいかどうかは分かりませんが、至って頑強です。それで、やっと仲間入りをしたと喜んでいるのです。

こっちはガリレオ・ガリレイの苦しみを味わっていました。彼も辛かったろうなぁ。

というわけで、冬山へ入るかどうか迷っているところです。

【写真】いの町伊吹山の霧氷

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hanedesu01 山ではときどきピンチや危機、アクシデントに見舞われる。

ピンチに陥ったとき、人間の反応に3種類ある。

まず第1種は「危険から遠ざかっているときには誰でも英雄」型だ。

普段は非常に調子の良いことをいっている。アイガーのフリーソロだろうが、無酸素のK2だろうがチョロいものだ。

ところが、いざピンチに遭うとパニックに陥ってしまい、何もできなくなってしまう。

ピンチを脱した途端に元気を取り戻し、いまの危機は自分が救ったかのようなことをいう。

第2種は「突然燃え尽き症候群」型である。

ピンチに遭うとがぜん闘志を燃やし火の玉となる。難問を次々と解決していく。

実に頼もしい。

しかし、だいたいがお調子屋である。ピンチを脱した途端に気がゆるんで大きなミスをやってしまう。

自らピンチを作り出してしまう迷惑ものだ。

第3種は「昼行灯(ひるあんどん)」型である。

普段はいてもいなくても良い男だ。いなけりゃなおさら良い。

いざ、ピンチに陥ったら・・・ やっぱり何の働きもしいない。ただじゃまになるだけだ。

ピンチを脱したあとなら・・・ いや何の役にも立たない。

ところがである。3年くらいたったある日ハタと膝を打つ。

「あーっ!! あの蛍光灯め、何かやっていると思ったら手を打っていたんじゃ」

ヒーローがパニクっても、ファイターがずっこけても、大事故にいたらなかったのは、昼行灯がちゃんと対策を講じていたからだ。

何もかも計算づくで、常日頃からおさおさ怠りなく準備万端整えて危機に対処しているのだ。

もし、あなたの近くに、さえない役立たずの男(女)がいたら大切にしたまえ。

いざとなったときに、あなたを救ってくれるのはそいつだ。

古いザイルの仲間"せいしろう"君は第3種に属す。ただし、昼行灯ではない。私みたいに偉そうにしないだけだ。

ねんのために断っておくが、3種の類型はあくまでモデルであり、フィクションである。実在する人物とは何の関係もない。「ははぁ、竹村め、第1種はAのことを、第2種はBのことを言っているな」などと余計な邪推をしないように。

もひとつ大事なことを言っておく。どのタイプも山では必要なのだ。

【写真】写真は本文といっさい関係ない

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ある時、小学校の同級生と話をしていて、誰か有名人の年俸が何億円になるといった話がでました。「俺たちゃ、この50年間ずっと働いてきちゅうが、1億円は稼いだかなぁ」と言います。

私の最初の月給は3000円でした。そこから出発していますが、現在の貨幣価値に換算しても、1億円とか2億円は生涯かかってやっと稼げる金額です。

「よけにゃよばんが(多くは要らないが)、もうちっくと(もう少し)欲しい」というと、「銭は、こじゃんとしんどい(非常に辛い)思いをして、ちびっと(少しだけ)稼ぐもんじゃ」と言われてしまいました。

「銭は喰うていけるだけありゃぁえい(良い)。よけ欲しいと思うけに、おかしげなことになる(不祥事を起こす)」とも。いやぁかっこうつけるなぁ。

登山も同じようなものです。さんざんしんどい思いをして山に登っても、雨に降られたり吹雪に閉ざされたりして、始めから終わりまでずっと良いことは何もなかった、という山行は多いものです。

冬は吹きすさぶ烈風と寒さで休憩することもできない、夏はうっとうしい虫の襲撃で食事をすることもできない、そんなことはしょっちゅうです。

それでも、まれには澄み切った青空や心にしみる夕焼け、わくわくするような日の出を眺められることはあります。たまに。

登山は自然が相手ですから、こちらの都合の良いように事は運びません。何か苦労をすればそれ相応の報酬があるとは限りません。自然の摂理に従うほかはないのです。

良いことも悪いことも、楽しいことも辛いことも、うれしいこともわずらわしいことも、何もかもぜんぶ含めて、ただ自然のままに受け入れる。良いとこどりをしない、楽に結果を求めない、それが登山なのです。かっこええなぁ。

晴天に恵まれてもそれを「良いお天気」とは言いません。雨に降られても別にがっかりしません。山で雨に降られるのは街で降られるより遙かに辛いものですが、それも登山の一部です。

以前は、週間天気予報で雨になっている週末には喜んで出かけていました。登山者が少ないので、静かな山を楽しめるのです。はじめから覚悟を決めて出かければ雨の風情もまた良いものです。

ただ、最近はちょっと注意しています。最近の山は、大雨が降ると山崩れが起こるのです。雨を味わうどころではない、危険な山になってしまいました。

【写真説明】 雨のテント(富山県・剣岳)。このときはテントが壊れるほどの強風と、テントの下を水がザアザア流れるほどの大雨に、まるまる2日間ずっと翻弄(ほんろう)されました。事故はなかったけど、登頂もできず、ただ風雨に耐えるためだけに越中まで行ってきた。げにだれた(ただ疲れただけ)。

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 だいぶ昔のこと、工石山に登っていたら、数人のおばさんたちが下ってきて、「赤良木はこっちかねぇ」と聞かれました。

 彼女たちは頂上から道を間違えて下ってきたようです。「道を間違えているから頂上まで戻ったほうがよい」と説明すると、「ここはものすごいきついがぜ」と文句を言います。私はそれを無視して登りにかかりました。

  後ろのほうで、「これを戻るのはもういやぜ、このまま下ろうや」などと相談しています。「戻って来いよ。たのむ」と密かに願いながら進んでいたら、彼女たちはあきらめたようで引き返してきました。

 ある資料によると、山岳遭難事故でトップを占める原因は道に迷ったことだそうです。道迷いによる遭難を少なくする方法は実は簡単なことです。『道に迷ったら元に戻れ』このたったひとつの原則を堅持すればよいからです。ところが意外とこれができないようなんですね。
 
  だいたい、ふもとから頂上に向かって登っている時に迷うことは少ないものです。なにしろ、ともかくも標高の高いところへ登って行けば、いずれ頂上に到達するのですから。もっとも、隣の山に登ってしまったといったといったドジなこともあったりするのですが??

 登りの時には、道を間違えたことに気がついて、引き返すのも楽です。麓に向かって下ればよいからです。ところが、頂上まで登った後に下り道で迷うと、本来帰るべき方向とは逆の頂上に向かって登り返さなければならなくなります。たいがいの人は「あの険しいところ、急坂を再び登るのはもう嫌だ」と考えてしまうようです。そこで近道をしようと思って道のないところへ入ってしまいます。そういうとき多くの人は谷を下るようです。

 沢登りという登山形態があります。渓谷を遡るものですが、これは岩登りに次いで高度な登はん技術や知識を要求されます。ザイル(ロープ)などの登はん装備も必要です。谷を下るのは登るよりもさらに難しい。そんな技術がある人なら、そもそも道に迷いはしないでしょう。

 山で道に迷ったときは、『頂上まで戻る覚悟を決めること』。この"覚悟"こそが道迷い遭難をしないための大鉄則なのです。

 登山に出かけるときには、もう1回頂上まで登る「覚悟」で出かけてください。

  【写真】こんな技術や装備のある人なら谷を下っても大丈夫です。

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