ホーム > ユニーク土佐人ブログ > 山に聞く
山で学んだこと: 2009年5月アーカイブ
私が(いちおう)本職としているコンピュータの世界には難解な言葉が多くあります。「そんな難しい言葉を使わずに説明できないのか」といった声も聞きます。
私はある世界で使われている言葉を「業界用語」と「専門用語」に分けています。
業界用語とは、日常語に同じ意味の言葉があるもの、専門用語とはそうした概念がない言葉です。
その業界に入ろうとするなら、専門用語は積極的に覚えるべきです。わざわざ日常語に言い換えるよりも、専門用語を使った方が、話のスジがとおり、簡潔になり、わかりやすくなります。
しかし、業界用語は使うべきでないと私は考えています。日常語を使えばよいのです。
登山界にも「キジ撃ち」「一本立てる」「舎利バテ」「霧ション」「おかん」など意味不明の言葉が多くあります。これらは、どれも業界用語です。
ちなみに、「きじうち」は野山で大きな用を足すこと、「いっぽんたてる」は短い休憩を取ること、「しゃりばて」は空腹のために元気が出ないこと、「おかん」は野宿をすること、「きりしょん」は霧の中で降る細かい雨をいいます。
キジ撃ちも霧ションも下品な言葉(ションは小さな用事)ですが、何となく味があります。
おかんは「邯鄲の夢(かんたんのゆめ)」がその語源です。唐の慮生(ろせい)が邯鄲という町で道士の枕を借りて寝たところ、一生の栄華を夢に見て、人生のはかなさを悟ったというあの故事です。
山の中で寒さに凍えながら独り野宿をしていると、人生のはかなさ虚しさをしみじみ感じます。そういう情感がふつふつと湧いてくる言葉です。
しゃりばては、もともとは芋や雑穀ばかりで(白米を食べないので)元気が出ないという意味でした。食べるものに事欠く時代にも、未知の世界に挑戦する勇者はいたのです。
そういうことを知らなくて、ただ「腹減った」では、先人の労苦に思いをはせることがなくなってしまいます。
私が登山用語集を編纂してみようと思ったのはそのあたりにありました。言葉にはその奥に深い意味があるのです。それが忘れ去られて表面的な解釈しかせず、人間への思いが薄くなっているように思ったものです。
差別語もそうです。言葉はそれを言う人、聞く人の人格に根ざしています。心の卑しいものか使えば卑しい言葉になるし、豊かな人が使えば豊かな言葉になります。(あ、あたしが言うセリフじゃないや)言葉狩りをしてもしょうがないと思います。
登山用語集は改訂を重ねて、いまは Ver.7.0(第7版)になりました。
冗談(自分ではエスプリだと思っているが誰も認めない)もちょっと入れて、たしょう読み物風にも作っています。登山に興味のない方もちょっとのぞいてみて下さい。もっとも、3000語以上の用語を収録した長文ですから全部読むのは大ごとです。(ま、ほどほどに)
登山用語集は、高知鷲尾山岳会のウェッブに載せています。
URL(アドレス)はhttp://homepage3.nifty.com/kochiwashio/MtTerms/terms.html
です。
もし、「登山用語集」「竹村義仁」で検索すると、他の人のウェブに載せてもらっていた旧版が出てくるかも知れません。「高知鷲尾山岳会」でググって下さい。(いかん。業界用語を使うてしもうた)
【写真】赤星山のカタクリ
気に入ったら押してください→人気ブログランキングへ
あるとき、"かずお"君と岩登りの練習に出かけた。
彼がスイスイと登った岩場を私はどうしても登れない。
当時、クレッテルシューとドイツ語でいっていたが、クライミングシューズ(岩登り専用靴)が出始めたころだった。彼はさっそくそれを買って履いていた。私はキャラバンシューズ(ハイキング用の靴)である。
「お前は履き物が良いからいかん。それをよこせ」とむりやり取り上げて、彼にはキャラバンシューズを履かせた。
それで、結果はどうなったか。
全く同じことである。彼が難なく登れるところを私はどうしても行けない。
あたりまえである。
技術の悪さを道具でカバーできるわけがない。優れた技術があって、その上でよい道具を使えば、より良い仕事ができる。
技術のないものが、いくら良い道具をそろえても技術が高まるわけはない。
胴長短足の私と違って、彼はスマートな体格をしていた。当時有名だった、フランスの名山岳ガイド、ガストン・レビュファに容姿がよく似ていた。
それで私は、彼を「土佐のガストン・レビュファ」と呼んでいた。略したら土佐ガスである。(あ、いかん。高知の人間にしか分からんダジャレをゆうてしもうた)
「お前は、腕が長いから掴めるホールド(手がかり)が広いので有利なんじゃ」と、とうとう体格のせいにしてしまった。
剣山山系の三嶺(みうね、さんれい)に青ザレという場所がある。
山腹の広い範囲にわたって、ザレ(石や砂礫の急斜面)になっている。
あるとき、何気なくそこを見ていたら何か動くものがある。
「ありゃ、あがなところを登りゆう奴がおる」
そこを登る必要性など何もないのだ。双眼鏡でのぞいてみると、なんと"せいじ"君である。
大きなキスリングザックを背負って、足もとがズリズリずり落ちる急斜面をガリガリ登っている。
「げにまっこと、たまーるか、やちがない」
彼はいつでもここ一番のところで底力を発揮する。
私は「パワーのせいじ、センスのかずお」と彼らのクライミング技術を評していた。
その後、2人とも数々の山頂や岩壁を制し、いまも登山界で活躍している。かずお君は国際山岳ガイドでもある。
私も口だけなら2人に決して負けはしない。
【写真】プライバシー保護のため人物写真はない
気に入ったら押してください→人気ブログランキングへ


最近のコメント
「地球は回る」田中真弓さん
「地球は回る」よしださん
「マルチプレート」ペンション・サライ「高知鷲尾山岳会・川添浩介」さん
「プーガオン」ペンション・サライ「高知鷲尾山岳会・川添浩介」さん
「プーガオン」ニューハーフさん
「障害者でも登れる山」ペンション・サライ「高知鷲尾山岳会・川添浩介」さん
「高新大賞」千葉 徹さん
「志を高く 登山家はつらいよ」千葉 徹さん
「志を高く 登山家はつらいよ」千葉 徹さん